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サンプリング周波数と音質

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 PCM方式の音声ファイルとしてWAVE(wav)とAIFF(aif)がありますが、どちらも非圧縮のファイル形式で
基本的には同じため、このページではWAVEを代表させて「サンプリング周波数と音質」の関係を検証したものです。

 (1) 上限周波数(ナイキスト周波数)と音質の関係
 (2) 上位サンプリング周波数(44.1kHz)との差分データから「削られた音」の比較

 試聴いただき、上限周波数(ナイキスト周波数)と音質の関係および「削られた音」をお確かめください。


T.上限周波数(ナイキスト周波数)と音質の関係


    周波数分析(FFT)して、サンプリング周波数ごとの上限周波数(ナイキスト周波数)を調査(確認)したもの。
    サンプルファイルとして音声の「WAVE(44.1kHz,16bit,Mono)」を用意し、このオリジナルからサンプリング
   周波数変換により、低位の音声データを生成しております。
    削られた音とは、オリジナルWAVEとした「サンプリング周波数 44.1kHz」との差分データです。
    ※出所:サウンド編集ソフトのサンプルファイルを引用。

WAVEファイル サンプリング周波数
44.1kHz 32kHz 22.05kHz 16kHz 11.025kHz 8kHz
上限周波数 22.05kHz 16kHz 11.025kHz 8kHz 5.5125kHz 4kHz
ファイルサイズ 561kB 407kB 281kB 204kB 141kB 102kB
再生
削られた音
※:差分データを取り出すためにはデータ数(サンプル数)を合わせる必要があり、いったんサンプリング周波数を下げてから「44.1kHz」に
   再変換してあります。(従って、ファイルサイズはすべて”561kB”です)

【波形を見ながら視聴する】
  FFT波形を見ながら視聴できますので、音質と上限周波数(ナイキスト周波数)の関係が確認できます。
  FFT波形画像には、削られた周波数範囲を表示してあります。

● オリジナル(基準)WAVE(44.1kHz) ------ (561kB)






 再生


● 32kHz


            再生(407kB)                    削られた音(561kB)

● 22.05kHz


            再生(281kB)                    削られた音(561kB)

● 16kHz


            再生(204kB)                    削られた音(561kB)

● 11.025kHz ------ "折り返しひずみによる雑音"が認められる


            再生(141kB)                    削られた音(561kB)

● 8kHz ------ 顕著な"折り返しひずみによる雑音"が認められる


            再生(102kB)                    削られた音(561kB)


U.ナイキスト周波数とエイリアス(折返しひずみ)


    WAVE録音では、サンプリング周波数の半分の周波数までが表現可能で、この周波数をナイキスト周波数
   と呼びます。
    A-D変換の際、ナイキスト周波数を越える周波数のアナログ音がA-D変換器に入力されると、変換された
   デジタル信号には"折り返しひずみ"による雑音が発生する場合があります。
    例)サンプリング周波数が16kHzとすれば、ナイキスト周波数は8kHzになる。
      この条件で9kHzの信号をA-D変換すると、変換されたデータは7kHzの信号として現われる。
      同様に10kHz→6kHz,11kHz→5kHzというように、ナイキスト周波数を対称軸として折り返した位置に信号が現われ、
     本来は存在しないはずの雑音が発生することになる。
    この折り返し雑音はA-D変換の時ばかりではなく、サンプリング周波数変換(D-D変換)の際にも生じます
    アンチエイリアスフィルターは、ナイキスト周波数を越える周波数の信号を除去するためのフィルターです。

    この章では、テープヒスをミックスしたサンプルWAVE(44.1kHz,16bit,Mono)を低位のサンプリング周波数に変換
   して、アンチエイリアスフィルターの効果を検証します。

【波形を見ながら視聴する】
  左(アンチエイリアスフィルターをかけない場合)右(アンチエイリアスフィルターをかけた場合)のFFT波形を
 見比べながら視聴ください。
  左(アンチエイリアスフィルターをかけない場合)のFFT波形画像には、ナイキスト周波数を表示してあります。
  右(アンチエイリアスフィルターをかけた場合)のFFT波形では省略しておりますが、ナイキスト周波数は同じです。

● オリジナル(基準)WAVE(44.1kHz) ------ (561kB)






 再生


● 32kHz


         フィルターなし(407kB)                 フィルター使用(407kB)

● 22.05kHz


         フィルターなし(281kB)                 フィルター使用(281kB)

● 16kHz


         フィルターなし(204kB)                 フィルター使用(204kB)

● 11.025kHz ------ "折り返しひずみによる雑音"が認められる


         フィルターなし(141kB)                 フィルター使用(141kB)

● 8kHz ------ 顕著な"折り返しひずみによる雑音"が認められる

【アンチエリアジング「あり/なし」の時間波形】





フィルターなし









フィルターあり


         フィルターなし(102kB)                 フィルター使用(102kB)


V.まとめ


 1.録音時の使用機器
    録音する際は、できるだけ周波数特性(周波数範囲)が良い録音機器を使用しましょう!
    音質は、この録音段階で決まります。→ 録音されていない音は、再現できない。(”無”から”有”は生じない)
    後からサウンド編集ソフトなどで編集しても、多くの音データから不要な音を削ることはできますが、少ない
   音データから無い音を作り出すことはできません。(倍音生成やエコーなどの人工音は、あくまでも特例です)
    ●不要な音を削ったサンプル → HPF/LPFでノイズ低減

 2.録音機器の周波数特性と適正サンプリング周波数
    録音データの再生音をPC(パソコン)でWAVE録音する場合は、録音データの周波数特性に合った
   サンプリング周波数でデジタル化(WAVE)します。
    この場合のサンプリング周波数は、(折り返し雑音を防止するため)録音機器の最高周波数
   の2倍より高く
します。
    具体的には、録音機器の取扱説明書に記載されている[仕様]の周波数特性を調べ、その最高周波数の
   2倍より高いサンプリング周波数でWAVE録音します。

 (ご参考) 手元にある録音機器の周波数特性と、適正サンプリング周波数の設定例です。
録音機器 周波数特性 適正サンプリング周波数※1
ICレコーダー SPモード 250Hz〜7.3kHz 16kHz
LPモード 250Hz〜3.5kHz         8kHz
テレコ(コンパクトカセットレコーダー) TYPE T(ノーマル)カセット 150Hz〜8kHz        22.05kHz※2
カセットデッキ TYPE Wカセット 30Hz〜19kHz 44.1kHz
TYPE Uカセット 30Hz〜17kHz 44.1kHz
TYPE Tカセット 30Hz〜16kHz       44.1kHz※2
※1:録音機器の「周波数特性が分からない」または「面倒くさい(笑)」場合は、44.1kHzや48kHzなどの高いサンプリング周波数にする。
  (過度のオーバーサンプリングは、必要以上に処理時間がかかるが”折り返し雑音”などの心配は不要になります)
※2:入力信号のちょうど2倍にならないよう、高めのサンプリング周波数にする。(有害な方形波の防止対策)


【雑談コラム】

● 世紀の誤訳「サンプリング周波数」?
   【sampling frequency】を「サンプリング周波数」と訳すのは、「音の周波数」と混同しやすい。
   しかも単位も同じ「Hz」では、直感的に区別するのが難しく紛らわしいったらありゃしない!
   この場合の【frequency】は、”回数”または単に”数”として「サンプリング回数」または「サンプリング数」と
  すべきだったとわたしは思います。
   わたしの翻訳(迷訳)
  ・録音時は、「(単位時間当たりの)サンプリング回数」または「(単位時間当たりの)サンプリング数」と表記。
  ・録音されたデータを指すときは、「(単位時間当たりの)サンプル数」と表記。
  ・単位は、sps (sampling per sec) とする。← わたしが勝手に作った単位(笑)

● WAVE/AIFF ファイルのビットレート換算
   WAVE/AIFF ファイルのサンプリングレートは、「サンプリング周波数、量子化ビット数、チャンネル数」で表します。
   これを、MP3やWMAなどと同じビットレートで表せば、どのくらいの値に相当するのかを示す計算式です。
    ビットレート =(サンプリング周波数)×(量子化ビット数)×(チャンネル数)
   例)音楽CD相当のWAVE(44.1kHz,16bit,ステレオ=2ch)の場合
      ビットレート =44100(Hz)× 16(bit)× 2(ch)= 1411200 (bit/sec=bps)≒ 1411 kbps





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初版:2006年6月19日  Copyright © 2006-2007 ノイズ除去&音声編集 − 工房AOK All Rights Reserved.  最終更新:2007年5月1日
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